常任監事選出に際し学ぶ

青山学院のため、そして「建学の精神を守る会」をお支え下さっている皆様お元気でお過ごしでしょうか。三寒四温の名の通り、一進一退しながらも日々しのぎやすい季節となって参りました。

今回は去る2月24日に行われました臨時評議員会の様子をお知らせします。この評議員会は一ヶ月前に解任した監事の補充のため行われました。あらかじめ理事会から提示された候補者を評議員会で審議し過半数の支持がありましたので元法人常任監事、常務理事、前顧問のT氏が選出されました。T氏は実業界のご出身で青山学院においても長く常任監事、常務理事等を歴任されており実力は十分にある方であると思われます。

しかし、この監事選出のために臨時評議員会はかなりの時間を要しました。いったん休憩を挟み、新たに監事1名を増員する寄附行為の変更を条件とすることが議案として提出され、再び審議を開始し初期の議案が可決されたとのことです。

何故このように長時間の審議が必要だったのでしょうか。寄附行為変更の条件をつけるほど、いわば大幅な譲歩によってようやく審議が終了したのです。問題点の背景を皆さんとご一緒に考えてみたいと思います。
第一の問題点は、候補者のT氏が監事として相応しい方なのだろうかという疑問ではなかったかと思われます。あらかじめ評議員に送られた経歴によれば、銀行に於いて長く監査役をされ、青山学院においても初の常任監事経験者であり、更に社団法人日本私立大学連盟で監事監査業務の講演等もされている方ですので、その能力において申し分の無い方と言えましょう。疑問はただ一つ、執行部から独立した第三者性の確保が保証されるのだろうか、ということだったと考えられます。「寄附行為」「私立学校法」「同通知」等の定めは末尾をご覧頂くとして、その意図するところは監査の独立性にあります。仲間内のなれ合い監査を排除することが監査の基本であることは論を待たないところです。氏は現理事長、常任理事と同じ時期に、しかも前理事長松澤氏の下でこれらの方々と苦楽を共にされた方です。執行部の中心メンバーとは共に働いていた関係であることは記憶される必要があります。仲間同士とみられる危険性があるのです。更に、常務理事経験者でもあったことは独立した第三者という建前からは疑問が残ります。末尾Ⅲ、私立学校法の一部を改正する法律等の施行について〔通知〕(抜粋)第三 留意事項の「ウ」の推奨規定には、残念ながら違反していることを指摘しなければなりません。勿論人格は別ですし、かつての仲間であるが故にかえってものが言いやすいと言うことはあるかも知れません。評議員の方々も実力についての吟味よりも、このような適格性に関することを指摘されたからこそ相当の時間が必要だったのではないでしょうか。評議員の方々の発言が活発になったことは度々ふれてまいりました。拠職上の評議員の自由な発言が多くなったことは、一歩も二歩も前進です。何度も書いたことですが、院長が二年ぶりに選出され、新理事会もこれを支える表明をされてから未だ何ヶ月でもありません。今回の結末はとにかくとして評議員会の方々のますますの活躍を期待し、その正常化を皆さんと共に喜びたいと思います。

第二の問題点は、監事選出の過程にあります。前回の評議員会、理事会で前常任監事を解任しましたので、一ヶ月後のこの評議員会で後任監事を選出する必要がありました。そのため理事長をはじめ執行部は大変真剣で、また苦労もされたようです。かなり多数の評議員と個別に会い、T氏の名をあげ監事としての感触を確かめたようです。どのような表現だったのか、受け取る立場によっても受け取り方は様々だったようですが、厳しい見方をすれば、これは執行部による事前の選挙運動だと思われても仕方ありません。更に付け加えるならば、あらかじめ評議員に送付された書面は、理事長名による立派な推薦文でした。ここはただ候補者の経歴を紹介する書面に止めるべきではなかったでしょうか。複数の候補者が居る場合なら、このような推薦文にされることはなかったと思われます。単数に絞った上、評議員会に対して職権による推薦文が出されたことになります。このようなやり方は、前理事長の松澤氏が、前常任監事選考に際し意中の人を指名した時を思い出させます。大変熱心で真剣だったことは理解できますが、今後はもう少し賢く誰の目にも大変民主的な選考だったと評価されるように、更に緊張感のある行動が必要かと思います。評議員会での採決も、過半数であったものの執行部にとっては薄氷を踏む思いであったことと察します。このような様々な疑義がもたれることは、T氏自身にとっては大変心外でお気の毒なことだと思います。ここではT氏への個人攻撃ではないことを明確にしておく必要を感じます。あくまでも選出の方法について、今後改めるべきことは改めて頂きたいとの願いを記すにとどめましょう。勿論のことT氏ご自身におかれましては、すべての疑問を払拭し、常任監事として相応しい職務を十分に執行されることをお願いしたいと思います。

さてこの際、監事に求められている職務の内容について確認しておきたいと思います。「寄附行為」第18条も、「私立学校法」第37条も、監事の「職務」の第一号は「法人の業務を監査すること」です。財産の監査、会計の監査は第二号であり、財産や会計のことよりも、業務の監査を重視していることがわかります。更に第四号で業務や財産に関する不正行為の発見や、寄附行為に違反する重大な事実の発見があった場合は、理事会及び評議員会に報告することを求めています。更に必要があれば文部科学大臣にも報告しなければなりません。ここで思い出して頂きたいことは、私たちの「建学の精神を守る会」が発足したのは、キリスト者条項等の「寄附行為」の中でも一番重要なことが危機に瀕していたことが原因でした。当時の監事はその時何を考えていたのでしょうか。何も気がつかなかったのでしょうか。いいえ、そのはずはありません。むしろ当時の執行部自身が寄附行為改訂を画策していたからこそ、その傀儡の監事の発言はなかったのだと私は考えています。この辺りの真実は、やがて歴史が明らかにしてくれるでしょう。現在明らかなことは、そのとき監事が目覚めていれば「建学の精神を守る会」が発足する必要はなかったということです。監事の責任は実に重いのです。会計のための監査だけでしたら「監査法人」のような外部の専門家集団の方が、目が行き届くことでしょう。是非そうあって欲しいと思います。しかし業務監査に関しては、「建学の精神」に照らして「寄附行為」の意味するところを正確に判断できる広範囲な知識と高度な識見が必要だと思います。そのために監事の定員を一名増員することは良いことです。少なくとも一名は業務監査を専門にされたら良いと思います。更に理事会と同じく過半数はキリスト者であるとする必要があります。二度と監事が気がつかないうちに、あるいは意図的に「寄附行為」違反をするようなことを見逃すことがあってはなりません。

ここで私のような経済界に身を置く者にとって常識化している監査の潮流にも触れておきましょう。企業の巨大化に伴い、利益の配分・企業の社会的責任・従業員の待遇等について、経営トップの独断をチェックするために、外部監査人の役割が重視されるようになりました。高名な第三者的外部監査人を置くことが企業の看板にさえなる時代です。透明性、公正性の確立が社会の信頼の大きな鍵となっています。法律でこれを定める国も増えてきました。さすがに学校法人にまで法制化は進んでいませんが、文部科学省の法律改正趣旨の解説にはその精神が明確に記されています。青山学院は規模の点でも、社会的影響力からも、率先して監査の重要性に目覚めて頂きたいと思います。このようなことは、今回常任監事に選ばれたT氏に対してはまさに釈迦に説法だと思いますし、かく言う私にもいろいろと教えて頂きたいと願っています。その手腕に大きな期待を寄せたいと考えます。

青山学院は今、日本中のキリスト教学校から注目されていることは前回のブログでも触れました。青山学院には大きな責任を負っているとの自覚が必要だと私は考えています。そしてその自覚と責任は、監事全員(常任監事に止まりません)にも求められていることは既に述べたことからも自ずと明らかです。今回の監事選出に際し私たちは再び多くのことを学びました。この経験を心に刻み、今後に広く生かすことが大切だと考えます。

今回のブログの結論は、監事全員に求められていることは第一に業務監査であること。そのためには「建学の精神」に基づき「寄附行為」の意味するところを正確に判断できる能力を身につける必要があること。そして青山学院においては、これはキリスト教の信仰に立ち、常に聖書を読み解き、これに従い、そして神の御旨に忠実に従うことによってのみ、真の監査が出来るのではないか、と私は考えます。

今回も最後までお読みくださってありがとうございました。




(資料)

.青山学院寄附行為(抜粋)
第18条 監事は、以下の各号に掲げる職務を行う。
(1)本法人の業務を監査すること。
(2)本法人の財産の状況を監査すること。
(3)本法人の業務又は財産の状況について、毎会計年度、監査報告書を作成し、当該会計年度終了後2カ月以内に理事会及び評議員会に提出すること。
(4)第1号及び第2号の規定による監査の結果、本法人の業務又は財産に関し不正の行為又は法令若しくは寄附行為に違反する重大な事実があることを発見したときは、これを理事会及び評議員会に報告し、又は文部科学大臣に報告すること。
(5)前号の報告をするために必要があるときは、理事長に対して評議員会の招集を請求すること。
(6)本法人の業務又は財産の状況について、理事会及び評議員会に出席して意見を述べること。


.私立学校法(抜粋)
第三十七条  3  監事の職務は、次のとおりとする。
一  学校法人の業務を監査すること。
二  学校法人の財産の状況を監査すること。
三  学校法人の業務又は財産の状況について、毎会計年度、監査報告書を作成し、当該会計年度終了後二月以内に理事会及び評議員会に提出すること。
四  第一号又は第二号の規定による監査の結果、学校法人の業務又は財産に関し不正の行為又は法令若しくは寄附行為に違反する重大な事実があることを発見したときは、これを所轄庁に報告し、又は理事会及び評議員会に報告すること。
五  前号の報告をするために必要があるときは、理事長に対して評議員会の招集を請求すること。
六  学校法人の業務又は財産の状況について、理事会に出席して意見を述べること。


.私立学校法の一部を改正する法律等の施行について〔通知〕(抜粋)
第三 留意事項   監事制度の改善
ア  監事の作成する監査報告書については、各学校法人の規模や実情等に応じた適切な内容とされたいこと。その際、監事の監査は財務に関する部分に限られるものではなく、学校法人の運営全般が対象となることに留意されたいこと。
イ  監事の選任については、監査される側の者のみで選任することのないようにする観点から改正するものであり、評議員会の同意を得ること及び最終的な選任を理事長において行うことを担保した上で、それ以外の具体的な選出手続については各学校法人において改正の趣旨を踏まえ適切に定められたいこと。
ウ  外部監事の導入及び評議員との兼職禁止については、監事の専門性及び独立性を高める観点から行うこととしたものであること。このため外部監事については、選任の際だけでなく過去においても当該学校法人の役員又は職員でなかった者や、財務管理、事業の経営管理その他法人が行う業務の運営に優れた識見を有する者を選任するよう努められたいこと。